戦国新報
 
 
平成9年 後期
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緊張感とナマズ
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 中国地方を制覇した毛利元就は「国を治めるためには緊張感が必要である」と言っている。 ある漁師の話である。「イワシ」を生簀に入れて生きたまま料理屋に持って行くと高く売れる。しかしほとんどの場合、料理屋に着く前に死んでしまうのだが、この漁師が持ってくるイワシはいつも活き活きしていた。店主が不思議そうに聞くと、漁師は、いつも生簀のなかにイワシとともに一匹の大きいナマズを入れておくのだという。イワシは変な大きな魚がいるために油断していると食われると思ってか知らないが、生簀の中で緊張感をもって生きているのだという。
 会社でも工事現場でも同じようなことが言えると思う。ナマズのような人がいることによって、職場に緊張感がただよい、事故を防ぎ、仕事も引き締まるのではないだろうか。
 元就は「トップが人を用いる時は、誰からも誉められる人間を上に立たせてはならない。理由はそういう人間は断を下せないからである。誰からも良く思われようとする人間は、たとえ悪事をした人間にも情けをかけ、評判は良くなろうが、公平を求める者達からは批判される。したがって真面目な者達はしだいに仕事をしなくなる」とも言っている。
 会社内、平穏であることにこしたことはないが、元就に言わせると「家中無事はやがて家の乱れる始まりである」ということである。
 今の不況な世の中、ナマズ人間が必要な気がするが、なかなかむずかしい。
【文:高田 金道】