戦国新報
 
 
平成9年 後期
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聞く耳を持って相手に良い気分を
すすむ
 ある日、秀吉は武将達の前で「世の中、自分より身分の高い人には知恵があり、身分の低い人には知恵がないと、決めてかかるうかつな奴がいるが、知恵の有無は身分や年に関係ない」と言っている。また「自分より身分の高い人の意見はよく聞くが、逆に身分の低い人の意見には耳を傾けないものだが、良く聞く耳を持つ人は謙虚にどんな人の言葉からも学ぼうとするので、益々偉くなっていく」とも言っている。
 秀吉が若い頃、行き付けの料理屋へ行くと、みんな忙しそうに働いていた。「たいそう忙しく繁盛して結構ですね」と問いかけると、店主は「とんでもない、世間が騒がしくて暮れだというのに、客足が遠のいて困っています。でも不景気な顔をしていてはお客様は益々来なくなります。だからせいぜい景気がいいような顔をして元気に笑顔でお客様に対応してがんばっているのです」と答えた。秀吉は「いい話を聞いた」と言って、三十両をなにかの足しに使ってくれと店のおかみに渡した。
 今の不況な世の中、知恵を出し、明るく笑顔で気分よく、お客様に対応することで周りの雰囲気が良くなるような気がする。だが、なかなかむずかしい。
【文:高田 金道】