戦国新報
 
 
平成7年 前期
もどる
誉められて力を発揮する人
うぬぼれる人
すすむ

 加藤清正の家老に飯田覚兵衛という武勇にすぐれた人物がいた。その人が隠居してからこんな話を語った。「自分は初めて戦に出て軍功をたてた時、多くの仲間が敵の弾に当たって死ぬのをみて、もう武士はやめようと思った。ところが戦が終わるとすぐに清正公から、今日の働きはみごとであったと刀まで賜ったのでやめそびれてしまった。その後も戦に出るたびに今度こそはやめようと考えたが、いつも清正公から陣羽織や感謝状を与えられ、誉められ、それに心を打たれ、とうとう自分の本心を告げられず、最後までご奉公し続けてしまった」
 当時「清正軍に覚兵衛あり」と音に聞こえた武者でも、奉公し続けた本当の理由が、清正公に誉め続けられた事にあったようだ。
 人は誉められる事で感激し、発奮する。また自信もつき今度はもっとよい成果をあげようと努力をする。反対に誉められて、うぬぼれて自分の力を十分に出しきれない人間もいる。誉められた事を謙虚に素直に受けとめて、また一生懸命努力することが大事なことではないだろうか。

【文:高田 金道】