戦国新報
 
 
平成7年 前期
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千成ヒョウタンの酒と勇気
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 秀吉の馬印は千成ヒョウタンといって有名である。千成とは、ヒョウタンが千個さがっているということだ。一個は手柄一つのことである。しかし実際の馬印はそんなに多くはない。
 信長が美濃の難攻不落の稲庭山城を攻めた時の話である。稲庭山城はかつては信長の舅(しゅうと)斎藤道三の城だったが、道三は息子に殺され、今はその息子がさかんに信長に戦いを仕掛けてきていた。だが、稲庭山城は攻めてもなかなか落ちない。そこで信長は家臣達に誰かあの城を落とせる者はいないかと聞いたが、自信のある者はいなかった。
 このとき、まだ木下藤吉郎といっていた秀吉が名乗り出た。命令を受けた秀吉は『正規の織田家の部下ではこの仕事はできない』と思い、蜂須賀小六達、近隣の土豪の群れを動員した。気性の荒い土豪の群れは普通のリーダーシップではついてこない。そこで秀吉は彼ら一人一人に酒の入ったヒョウタンを持たせた。『飲みながら戦おう』これには土豪の群れもビックリした『合戦なのに酔っぱらってもいいのか』
 秀吉は『そうだ。こんな危ない仕事はしらふではできない』といい、これが勇気づけになってみんな怖いものがなくなった。
 この作戦が成功して、稲庭山城は陥落した。信長はこのときの成功を機会に秀吉に馬印を許した。これが千成ヒョウタンである。
 酒が入れば気持ちが大きくなるというのは今も昔も変わらない。要はそれをいい方向にもって行くということではないだろうか。
【文:高田 金道】