戦国新報
 
 
平成9年 後期
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秀吉は「ホンネとホンネ」で
人とのつながりを大事にした
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 秀吉が天下を取った頃、部下達に各国々を与えたが、その時にこんなことを忠告した。「国を治めるためには上に立つ者が正しい行いをしていれば、命令するまでもなく領民は従うであろう。だが、不正を行っていれば、どんなきびしい命令を出しても領民は従わなくなる。また人を傷つけないために大切なことは、傷つけられた人の心の痛みを知ることだ。」
 秀吉は農家の倅、下積みで苦労したために、他人の人情の暖かさが何倍となって身にしみたのである。 うちのめされて流した熱い涙があるからこそ、どうしても生き残ろうとする強い気持ちが鍛えられるし、心にきざまれた傷の深さだけ大きな人間的魅力を磨きあげることができるような気がする。 他人とのつながりは「ホンネとホンネ」でなければ結ばれないと思う。領主と領民、きれいなことを並べても「ホンネ」のところで領民を軽んじていたら、そうした気持ちが伝わり「タテマエ」だけで領民を動かそうとしても何年経っても誰も動かないと思う。人を動かすためにはやはり「ホンネ」で納得させて相手の胸に飛び込み「誠心誠意」努力することだと思う。
 今の不況な世の中、さまざまな角度から相手を理解して「ホンネ」でがんばることが大事なような気がするが、なかなかむずかしいことだ。
【文:高田 金道】